無意味なことをもっとやりたい

 

僕は歩くのがすごく遅くて、誰かを思い出す時も「あの人は歩くのが早かったなあ」なんて考えたりしちゃうのだけど、いやいや、この世が速すぎるんだよナァ。

本当は歩くのが遅いなんて全然気にしたくないし、なんなら立ち止まってもいいじゃんね。座ったままお尻でずりずり進んだり、這いずって転げ回って、そうやって進んでいきたい。でもそんな思いとは裏腹に、相対的にこの世はどんどん早くなっていきます。

あっ! 花が枯れた。あっ! 婆ちゃんが死んだ。あっ! 海が干上がり石油は枯れ、太陽は爆発した。そうして俺は、俺は……

 

この世は速すぎる。予定の詰め込み過ぎた修学旅行みたいに、目まぐるしく変化していく。僕らは立っていた場所からいつの間にか流されて、ぶつかったりはぐれたりしながら進んでいく。泳いだって沈んだって、行き着く所はみんな同じなんだ。焦らず行こうぜ。

僕はここにいるよって、通り過ぎていく電車に言う。寄せては返す波を捕まえてみる。虫の鳴き声を頼りに、知らない道を歩いていく。

どうでもいいのにどうにもならない現実に足を取られてしまう。

無意味なことをもっとやりたい。アメリカ人のハプニング映像みたいなぶっ飛んだことじゃなくて、生産性も実益もない、僕らじゃないと出来ないようなことだ。(それは例えば、ゆっくり歩くだとか)

 

この世は速すぎる。僕はゆっくりと、流されていく。

 

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