結婚しようよ

 

タイトルは曽我部恵一の曲から。

 

今さらだけど、友人の結婚式に参列した。そのことについて、いつか思い出せるように残しておきたい。

私は小説家でもなければエッセイストでもないので、この時ばかりは華やかな式の様子や二人の喜びに満ちた姿を詳らかに書き記せないことが悔やまれるわけだが、そんなものは一枚の写真があれば事足りる。

何を感じてどう思ったのか、そんな事を書いておきたい。

 

 

 

その友人とは思えば長い付き合いで、18の頃から数えて8年が経とうとしている。なんというか、昔から適当なやつで、いつも振り回されていた気がする。裏を返せば要領がよくて、いつも私たちを引っ張ってくれていた。

学生時代を楽しく過ごせたのは、間違いなくこの友人の存在による所が大きい。感謝してます。

自分が躊躇いもなく高いご祝儀を出せる、数少ない友人の一人でもある。

 

結婚の報せを聞いた時、純粋に幸せを願う気持ちが湧いてきて、他人を心から祝えることが、そういう関係の中に居られることが何とも言えず嬉しかった。

そいつは笑ってて、奥さんも笑ってて、僕も笑って、幸せな空間ってこういう、たった二人の喜びから生まれて波及していくんだなあ、と、身を持って知ることにもなった。

 

 

 

長くなりそうなので、式のことを少しだけ。

 

まず新郎の入場。華やかな衣装を纏い、緊張した面持ちで壇上へと上がっていく。いや、緊張すんのかい! 強がりな友人の憎めない一面でもある。

続いて、新婦が純白のドレスを身に纏い入場する。白って200種類あんねんけど、純白、という言葉はこの時のためにある言葉なのだな。

ベールを被り、父親と伴にバージンロードを歩く。バックではハープによる荘厳な演奏が流れている。天国?

嗚呼、あれは、ヘブンズドアだ。一面ガラス張りのホールに注がれるやわらかな光が、ついに辺りを包み込んだ。

参列席の私たちは息を呑む。

二人の横顔のなんと美しいことか。

うおー!俺たちが付いてるぞ! そう叫び出したかった。それくらい二人は尊く、みんなの未来を照らす希望に見えた。僕にはね。

 

個人的に最大の泣きポイントは、壇上で二人が何やらサインをした場面だ。たぶん誓約書みたいなものに名前を書いたんじゃないかと思う。

神の御前で、永遠の愛を誓い合う二人。私たちはその証人だった。

 

僕はすごくダサくて、人前で格好付けてばかりなんだけど、本当に愛する人の前ではきっと格好つける余裕なんて、その必要なんてなかったりするのだろうな。

そうだといい。愛とは過信するものだからね。

僕も一人のロマンチストとして、永遠を誓えることを少し羨ましく思いました。

 

これは余談なんだけど、名前はローマ字でサインしたのかな。神父さんが外国の方だったから、自分ならちょっと迷いそうだ。

「ジャパニーズ、オーケー?」

 

 

 

最近、ある友人とちょうどこんな話をした。

「誰もが産まれてから心に降り積もるさみしさを、少しずつ溶かしながら生きている」のだと。

人はひとりでは幸せになることも出来ない。一緒になるべき人間は、互いにもつ孤独が釣り合うひとなのではないかと思う。

 

 

/

 

 

ここからは個人的に友人に贈る言葉なので、読まなくても大丈夫です。

 

 

 

本当にめでたい。僕は一生あの日のことを思い出しては、その度に二人の幸せを願い、支えていこうと思うことだろう。式を挙げてくれてありがとう。

 

恋愛のことで初めて相談された時のことを思い出す。喧嘩したとかで、もうだめかも、なんて、あんな弱々しい姿を見たのはあの一度きりだ。

僕は嬉しかった。

人は本当に大切なものの前では、弱く、優しくなるものだからね。

あなたは認めないかもしれないが、あの時見せたその弱さを、あの時感じた無力感を、この先何度でも思い出してほしい。

 

ニーチェの言葉に「結婚とは長い会話である」というものがあります。いや、会話にしては長すぎやろ。

僕は、沈黙こそ大事にしてほしいと思う。二人の間に流れる無言の信頼を尊んでほしい。

言葉が万能じゃないことくらいもう知ってるはずなのに、私たちは忘れがちだ。伝えたことも感じたこともやったことも全部忘れて、勝手に不安になることもあるだろう。

語り合うことをやめたっていいんだ。好き好き言い合うよりもっと大事な役割が、愛にはきっとあるからね。

 

まあ僕が言うことでもないですね。

 

最後に。

これから先、ご両親が、友人が、上司が、僕が、あなたたち二人に多くの助言やアドバイスをすることと思う。

でも、そんなものはどうだっていいね。二人が幸せでいることを何より優先してください。

どんな偉大な名言よりも、目の前にいる人のひとことひとことに耳を傾けてほしい。

そして礼儀を尽くしてほしい。お互いが元は一人の人間であったことを、(僕を見て)いつでも思い出してほしい。

そしていつまでも、尊敬できる友人でいてください。

 

それでは、ここまで。