ショート・ショート・ショート・エッセイ

 

忘れてしまったものたち

 

初恋の人の名前、親の年齢、小さい頃好きだったもの、りんごの剥き方、同級生の顔、あとでtweetしようと思ってたこと、努力の仕方、好きだった人の匂い、心に留めたはずの本の一節、ズボンのサイズ、口約束、毎年冬になると買っていた何か。

 

この世のどこかには、忘れられたものだけがひっそり集められている場所があるらしい。

 

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最近、ギャルが好きで困る。

昔は色白で弱くて薄幸そうな、いかにも文学少女的なキャラクターが好きだった。

今ならオタク×ギャルの組み合わせが流行った理由がわかる。異質な、非現実の象徴だったんだよね。どこかへ連れてってくれるような、理解の及ばない存在をずっと待ってるんだよね。

「今のままでいい」なんて思ってるオタクなんて本当はずっと少ないんだから。自分を連れ去って、無理やり変えてくれる存在を、ずっと待ってるんだよな。たとえばそれが異世界だったり、ギャルだったりするだけで。

オタクにやさしいギャルの作品で、ギャル側の葛藤や人生が描かれることはあまりない。その「解像度の低さ」こそが、理不尽な救いに必要な要素だから。

それってなんだか少女漫画における男性の描き方に似てませんか?

 

今思えば昔からドラゴンボール人造人間18号が好きだったな。元祖「理解のあるギャル」じゃないだろうか。

頭が良く、おたく趣味に理解があり、分け隔てなく接してくれる、自己主張の激しくないギャル。

ありがとう。

 

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ここ一ヶ月くらい、創作について語り、音楽について語り、生活について語り、自分のことについて語ったりした。

リアルな友好関係において「共感する」ことが重要視される中で、発信する場面はずっと少ない。

CDショップに並んでる適当なバンドについてうんちくを喋ったり、博物館に行って適当な素人考察をしてみたり、いわゆる「自分語り」をする事ってあまりない。してみて初めて話を聞いてもらうのって嬉しいと思う。僕は苦手なりに、お喋りが好きなんだろうな。

もちろんたくさん、みんなの話も聞きたい。語り合いたい。

 

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忘れたくない! 色んなことを。(倒置法)

 

最後に忘れるのは匂いだとか、言葉は残り続けるだとか、教えた花の名前が呪いになるだとか、現実はそんなにエモーショナルじゃない。

私の場合は食べ物だ。

 

小さい頃デパートのレストランに連れて行ってもらって、入り口に立ててあるメニュー表の前で「安いほうがいいよね?」と言った時の、両親の怒るとも悲しむともつかない顔を見た後に食べるランチプレートの、あの味。

 

コメダ珈琲のたっぷりコーヒーで思い出す人も、明太子を見て思い出す人も、コンビニスイーツを見て思い出す人もいる。

くしゃくしゃのパンのごみ。果汁1%。溶けたチョコレート。

ああ、あの時、どうしてお前は……

 

みんな元気にやってるかな。やってなくても全然、大丈夫だけど。

 

 

 

おわり